艶珠様からの頂き物遠い街の何処かで制服を脱いで随分とたって、学生時代の仲間は一部を除いて疎遠となってしまった。 それも仕方無いとは思うが、少し寂しい気がするのは、かつてのクラスメートをテレビで見てしまったからだろうか? 親元を離れ数年。 身の回りの世話も、食事の為の買い出しも、慣れたもので。 この街にお世話になって、よく行くスーパーの配列にも、当然、何時がセールだとかも熟知して、なんだか所帯染みていると、苦笑しつつも、セール品の缶詰に手を伸ばす。 「三上?」 ワンブロック離れた場所にかつてのクラスメートを見る。 「どうして?」 もし、これが学生時代なら。 寮の傍の、武蔵森生御用達のコンビニだったなら。 当然、間違いなくその人であろう人間で。 けれど、今は。 彼はテレビの向うの人だ。 そう、つい最近見た。 そう思ってふと気づく。 彼を見たのは、地元Jリーグ球団への移籍会見。 ローカル局のスポーツニュース。 ああ、そう言えば。 その球団の練習グラウンドは、確か、この辺りだったか。 そんな自己完結で、声をかけるか考える。 かつてのクラスメートも、今ではJリーガー。 声を掛けても良いのだろうか? けれど、此処で無視をするのも、薄情な気がして。 「三上選手」 「はい?」 かつての彼なら、「ああ゛?」と煩そうに返しただろう。 けれど、彼は、見られる事に意識をしているのだろうか? 声を掛けられた事に驚いた表情を見せたものの、柔らかな物腰で澪を見つめてくる。 そんな彼に寂しさを覚えつつも。 「スポーツ選手が、そんな食事では問題かと?」 そう続ければ、流石に不機嫌になったのか、一瞬だけ目付きが悪くなる。 そうする事で気づいたのだろうか? 「綜那・・・か・・・? 相変わらずお節介な奴」 「覚えていてくれて光栄です。三上選手」 「やめろ、それ」 「でも、三上、じゃ、失礼じゃない?」 「んな事ねぇよ。 無駄に親しそうにされんのもムカつくけど、よそよそしくされるのもムカつく」 「そっか。んじゃ、三上、ね。 で、ご飯作ってくれるような人、いないの?」 芸能レポーターのような質問で、嫌がられるかとも思ったが、そんな事もなく。 「いたら、こんなとこで買い物してねぇよ。 初めての店じゃ、欲しいもの探すのも一苦労だぜ」 「んじゃ、この街の先輩住人として、案内してあげましょう」 「ああ、頼むぜ」 そう柔らかく笑った様は、少し、幼げで、学生時代を思い出す。 そして、それぞれの籠が、それなりになった頃。 「ねぇ、迷惑じゃなかったら、ご飯、作ってあげようか?」 「ん?」 「ああ、一人で食べるよりも、二人のが楽しいし。 それに、その食材じゃ、栄養足りなさそうだし?」 つい学生時代に戻った気がして、そんな事を口にして、慌てて、取り繕うように言葉を重ねる。 「そっちはいいのか? 誤解されるような相手、いねぇのか?」 「いたら、誘わないでしょ」 「まぁ、そうだな。 んじゃ、ご馳走になるか。 けど、そうやって誘うんだ。旨い飯、作れるんだろうな」 「失礼ね。これでもパティシエなんですけど」 「それって、菓子作る奴だろ?」 「けど、最低限の調理の勉強もしてるし、栄養士の資格も持ってます」 「へぇ、それは楽しみだな」 そう口角をほんの少し上げて笑う、とてもテレビでは見せられないだろう笑みに、今日だけは、学生時代に戻ってみようかと思う。 ほんの少し、彼に恋心を抱いていた自分に。 けれど、この世に偶然は無く、全ての出会いは必然。 数年後、この再会が公で語られる日が来る事を二人は知らない。 ~*~*~*~*~*~ お世話になってる艶珠様からいただきましたぁ~vv 私の大好きな[ホイッスル!]の三上ですvv ありがとうございますm(^^)m (「綜那」ってのは、楽天以外での私のHNですf(^^; 綜那澪ってなのってま~す(笑) |